エスコンフィールドが変えた北広島――球場一つで町の格が上がった理由

日本文化・地域

見落とされてきた町が、ある日から変わり始めた

新千歳空港と札幌のちょうど中間あたり、なだらかな丘が続くエリアに北広島という市がある。人口はおよそ6万人。石狩管内の中でも「特に理由がなければ立ち寄らない町」として、地元民の間でさえそう扱われてきた場所だ。自分もそのうちの一人だった。

2023年、その空気がまるごと変わった。日本ハムファイターズの新本拠地、エスコンフィールド北海道が開業したのだ。球場が一つできただけで何が変わる? と思う人もいるかもしれない。ただ、この町で実際に起きていることを見ると、その問いへの答えはかなり具体的に出ている。

なぜ札幌ドームを出る必要があったのか

ファイターズは長らく札幌ドームを本拠地にしていた。ところが、あの施設には構造的な問題があった。満員の試合を打っても、球団は年間およそ13億円を札幌市に賃料として払い続けなければならない。スタジアム内のコンセッションや広告収入も球団にはほとんど入ってこない仕組みだった。

しかも、コンクリートの上に人工芝を敷いただけの床面では、選手のひざへの負担が深刻だった。動くたびに硬い地面からの反動が返ってくる。けが人が絶えなかった。

つまりこういう構図だ。観客が増えれば増えるほど潤うのは施設の持ち主である札幌市で、ゲームを作っている球団の財務は改善しない。これは長続きする話ではなかった。

自前の球場を持つ。その決断が動いた。候補地として真駒内公園も浮上したが、自然保護や住民の反対でなくなった。最終的に選ばれたのが北広島市のスポーツパーク跡地だった。

球場ではなく、「街」をつくった

エスコンフィールドが他の球場と根本的に違うのは、これが単体の施設ではないという点だ。

「北海道ボールパークFビレッジ」という32ヘクタールの複合開発の核として建てられている。マンション、シニア向け住宅、ホテル、学校、病院まで含む、ほぼ一つの街。「試合を観に行く場所」ではなく「人が住む場所」として設計されたのが、このプロジェクトの本質だ。

発想の転換、という言葉は使い古されているけれど、ここで起きていることはまさにそれだ。

地元の人間として、これをどう見ているか

雇用は増えた。人口減少にはブレーキがかかった。この二点は数字として出ている事実だ。

一方で、いいことばかりでもない。地価上昇率は北海道で1位を記録した。すでに土地を持っている人には追い風だが、これから家を建てたい人にとっては逆風になっている。試合がある日の北広島駅周辺の混雑は、地元民として見ていても率直に言って相当なもので、河川敷や工業地帯への路上駐車が問題になり、取り締まりの強化にまで至っている。

それでも、差し引きすればプラスの方が大きい。

かつての北広島は、名前を言っても「どこ?」と返ってくる類の町だった。今では北海道の中でもトップクラスの知名度を持ち、ふるさと納税の実績も好調。周辺の自治体から見れば、うらやましい位置に来たんじゃないか。そのくらいの変化が、数年の間に起きた。

これは北広島だけの話ではない

日本各地で、スタジアムを軸にした地域再生が「成功パターン」として注目され始めている。

北海道においては特に、「プロ野球の本拠地がある町」というブランドの強さが際立つ。北広島はそのブランドをまるごと手に入れた、かなりレアなケースだ。抽象的な話ではない。知名度の上昇、ふるさと納税額の増加、移住希望者の流入という形で、ちゃんと数字に表れている。

地価上昇や混雑というコストはある。それを差し引いても「町全体の格が上がった」という事実は揺るがない。

おわりに

北広島は、ありがちに聞こえるけれど実際に結果が出ている成功例だ。

無名に近かった地方都市が、たった一つの大きな投資で北海道トップクラスの知名度を手に入れ、ふるさと納税や移住希望者という形で果実を得た。「どうやって人を呼び戻すか」という問いに悩む地方都市にとって、これはかなり説得力のある答えの一つになっている。

この町を訪れる機会があれば、試合観戦だけでなく、その裏にある「町が生まれ変わった話」も少し頭に置いておいてほしい。

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